株を選ぶときに「財務分析」が有効だと聞いたことあるけど、横文字とか多くてよくわからないなぁ。
このような方に向けて、財務分析について解説します。
財務分析とは、財務諸表等の数値を用いて企業の競合優位性を分析する手法です。
人間でいう健康診断や人間ドッグのようなものです。
人間も定期的に健康診断を受け、病気になっていないか等のチェックをしますよね。財務分析もそれと同じです。
競合他社と比べて「財務状況は健全か」「収益性は高いか」などを分析し、 現状把握と将来予測を行います。 万能ではありませんが、投資先の選択における判断材料になります。
今回は「CF(キャッシュフロー)」について解説します。
目次
CF(キャッシュフロー)とは
CF(キャッシュフロー)とはその名のとおり、「お金の流れ」のことです。
キャッシュフロー計算書は1年間の会社のお金の流れ、つまり、どういった理由でお金が入ってきて、どういった理由でお金が出て行ったのかを表した表です。
会社の売り上げとして入ってきたお金だけでなく、銀行から借りたお金やお金をどれくらい使ったのかわかります。
支出より収入が多ければプラス、支出より収入が少なければマイナスになります。
キャッシュフロー計算書では次の3つに区分されて表示されます。
(1)営業CF:本業によるお金の流れ
(2)投資CF:投資に伴う現金の流れ
(3)財務CF:資金調達に関する現金の流れ
そして理想的な状態について、結論から言うと、次のとおりになります。
営業CFはプラスのほうがいい
投資CFはマイナスの方がいい
財務CFはマイナスの方がいい
あれ? 支出より収入が少なければマイナスになるんだよね?
投資CFと財務CFはマイナスの方がいいの?
詳細についてはそれぞれの項目で説明しますが、これが「本業が好調。将来に向けて投資をしている。借入金の返済が進んでいる。」という状態を表しているからです。
まずは難しく考えずに、キャッシュフロー推移をみて「営業CFプラス、投資CFマイナス、財務CFマイナスならいい」と考えればOKです。
例えば、KDDI(9433)のキャッシュフロー推移を確認すると、「営業CFプラス、CFマイナス、財務CFマイナス となっており、まさに理想的な状態といえるでしょう。
続いて、CF(キャッシュフロー)の3項目についてそれぞれのポイントを見ていきましょう。
営業CFのポイント
営業CFは会社の本業によるお金の流れを表しています。
簡潔に言うと、「商売して手元の現金がどれくらい増えたのか」を明らかにしたものです。
例えば、商品を売ったことでいくらお金が入ってきたか、給料等の支払いでいくら支払ったか等がわかります。
したがって、営業CFが多いということは、お金を生み出す能力が高いことを意味します。さらに、その分を設備投資や、借入金の返済に使うことができるため、良い会社の第一条件とも言えます。
逆に、営業CFがマイナスだと、倒産する可能性もあります。
営業CFがマイナスだということは、「営業活動の収入」だけでは「営業活動の支出」をカバーできていないことを意味し、資産の売却や借入金に頼らざるを得なくなります。そして、この状態が数年続くと資金繰りに行き詰ってしまい、倒産する可能性が高くなります。
起業1年目等の場合は、営業CFがマイナスになることもありますが、基本的にはプラスであることが望ましいです。
個人的には、過去10年程度確認し、マイナスがないか(赤字の年はないか)、増加傾向かを確認しています。
投資CFのポイント
投資CFは投資に伴うお金の流れを表しており、次の2つに分けることができます。
1 会社を発展させるための投資(工場や機械、設備への投資等)
2 資金を増やすための投資(株式投資などの資金運用)
投資CFがマイナスだということは、将来のために積極的に投資をしていることを意味します。
常に発展していくためには、お金が出て行こうとも設備投資が大事になります。したがって、投資CFはマイナスが望ましいです。
逆に投資CFがプラスの場合、会社が持っている設備や、株などを売った金額が投資分を上回っていることを意味します。経営が悪化し、資金繰りが苦しくなった結果、資産等を売却して資金を確保した可能性があります。
財務CFのポイント
財務CFは資金調達に関するお金の流れを表しています。足りないキャッシュをどう補ったのかがわかります。
簡潔に言うと、借金が増えていればプラス、借金が減っていればマイナスになります。
財務CFがマイナスということは、借金の返済が進んでおり、負債が減っていることを意味します。
ただ、営業CFが投資CFに充てられずに借金返済をしている場合、金融機関に返済を迫られている可能性があります。
逆に財務CFがプラスということは、借入金や社債などで資金調達をしており、負債が増えていることを意味します。
原則良い状態とは言えません。しかし、積極的に成長を目指す場合、金融機関から借入れて資金を調達することで、短い期間で企業を拡大できるため、必ずしも悪いとは言えません。
3つのCFによるタイプ分け
CFについて3つの分類で見てきましたが、各区分だけで判断するのではなく、トータルで判断する必要があります。
簡潔に表でまとめると下記のとおりです。
注目してほしいのは営業CFです。何よりも営業CFがプラスであることが大切です。
営業CF | 投資CF | 財務CF | 評価 | |
① | + | - | - | A |
② | + | - | + | B |
③ | + | + | - | B |
④ | + | + | + | B |
⑤ | - | + | + | C |
⑥ | - | - | + | C |
⑦ | - | + | - | C |
⑧ | - | - | - | D |
評価Aについて
①は営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスです。
つまり、「本業が好調。将来に向けて投資をしている。借入金の返済が進んでいる」状態だと言えます。
会社にとって最も望ましいタイプだと言えるでしょう。
評価Bについて
②、③、④は営業CFがプラスのため、本業でしっかり稼げていることがわかります。
特に②は投資CFがマイナスで、財務CFがプラスです。
つまり、設備投資のために資金調達をしており、将来を見据えた積極的な借り入れをしているといえるでしょう。
評価Cについて
⑤、⑥、⑦は営業CFがマイナスのため、本業がうまくいっておらず、資産を売却したり、借り入れしたりして、存続している状態だということがわかります。
特に、⑦は投資CFがプラス、財務CFがマイナスです。
つまり、銀行からの借り入れができず、資産を売却することによって、本業の支払いや借入金の返済に充てていることになります。より危険度が高いと言えるでしょう。
評価Dについて
⑧はすべてマイナスの状態です。
本業でも稼げておらず、銀行への返済も迫られており、売却する資産もない状態です。要するに倒産間近です。
手元のキャッシュがなくなった時点で倒産するでしょう。
まとめ
CF(キャッシュフロー)とは、「お金の流れ」のことです。
支出 < 収入だとプラス、支出 > 収入だとマイナスになります。
CFは次の3種類に区分されます。
(1)営業CF:本業によるお金の流れ
(2)投資CF:投資に伴う現金の流れ
(3)財務CF:資金調達に関する現金の流れ
理想的な状態は次のとおりです。
営業CFはプラスのほうがいい
投資CFはマイナスの方がいい
財務CFはマイナスの方がいい
以上参考になればうれしいです。